PANZER (パンツァー) 2013年 11月号 [雑誌]

特集の「１０式戦車」については「どのように戦うか」と「問題点を探る」の二本の論文。前者はアメリカ陸軍の教範「戦車小隊」を基本にした戦闘マニュアルの詳述、後者は＜転輪５コは少なくない？＞から始まって＜相棒となるAFVがいない＞まで辛口の論評。「筆者のような無責任なライターの耳に入らないだけなら・・機密保全の観点からして賀すべきこと」というコメントは現下の特定秘密保護法案に関する軍事ジャーナリズムの現場からの鋭い皮肉であろう。準特集はWWII北アフリカ戦線の「運命のエル・アラメイン戦-１」。すでに幾多の論考が存在しているなかで著者は独自の工夫を凝らしている。たとえば＜ドイツ兵の戦闘能力がなぜ高かったのか＞。またロンメルの耳となっていた（まぬけな）情報源であったボナ・フェラーズ大佐の存在。この人物はのちに日本占領軍で特異な役割を果たすのだが。他にも前号から続く「各国の海兵隊」でイタリアとスペイン海兵隊の歴史と現状。連載の田岡俊次の「軍事情勢を検証する−４」では「逆方向に泳ぐ水泳選手」と安倍首相を揶揄しているなど厳しい。陽の当たらなかった「陸上自衛隊の雪上車」を取り上げた論文と、個人としては初めて訪れた「バスト−ニュ・バラック」訪問記が面白い。新編集長の誕生を祝って☆５つ差し上げるが、再現不能な変換ミス（５１頁右９行目、多分「連隊」だろう）などが散見するのはいただけない。「収益という名の卵を産んで」貧しいライターへの未払いを一掃してあげてください。